2012年3月23日金曜日

見ごろ・食べごろ河津桜

 河津桜が例年よりかなり遅れて、やっと見ごろになりました。明るいピンクの花は、人の心もぱぁっと明るくしてくれます。そしてこの花の開花を待っていたのは、人間ばかりではないようです。ヒヨドリやメジロなど、花の蜜を好む鳥たちも、次々とやってきます。花を愛でるのも楽しいのですが、これらの鳥たちの様子を観察するのもとても面白いです。
 一番我が物顔でやってくるのは、ヒヨドリ。一つ一つの花を丁寧に訪れて蜜を吸っているかと思うと、「えい、面倒だ!」とばかりに花ごと全部食べてしまうこともあります。メジロたちがやってくると、「お前たちには食べさせないぞ!」と追い払います。
 ときどき、これぞヒヨドリの鳴き声という節回しで「ピーヨ、ピーヨ。」と鳴くのは、「おいしい、おいしい。みんなもお出で。」と言っているのか、それとも「ここは俺様のレストランだぞ、近寄るな。」と警告しているのか。ヒヨドリ語がわかったら、もっと楽しいことでしょう。
 メジロもヒヨドリも、嘴を花粉で黄色く染めて、桜の受粉を助けてもいます。


 桜にとっても他の鳥たちにとっても、一番困ったお客は、ワカケホンセイインコです。外国から輸入された鳥が放鳥されて繁殖し、今では野生化しているのです。ワカケは、桜の花を千切り取って、蜜だけ吸うとぽいと捨ててしまうので、たちまち花がどんどん減って、地面にいっぱい散らかることになります。ヒヨドリも怒って羽をぶるぶるふるわせるのですが、ワカケにはかなわないらしく、追い払うことができません。

 井の頭公園には、河津桜以外にもいろいろな種類の桜が植えられていて、これから次々と開花していくはずです。花を愛でるついでに、こんな鳥たちの姿も観察してみると、楽しさも倍増すると思います。

2011年12月7日水曜日

冬尺蛾の季節

 写真は、クロスジフユエダシャクという蛾が交尾しているところです。12月4日に井の頭公園の玉川上水縁の擬木柵で撮りました。クロスジフユエダシャクは11月下旬から12月中旬ぐらいまでに成虫が出現し、交尾産卵します。
 ふつう、昆虫たちは冬になると活動止めたり、成長を中止して越冬態勢に入ることが多いのですが、クロスジフユエダシャクのように、わざわざ冬に羽化・産卵する蛾もいるのです。これらの蛾は冬尺(冬に現れるシャクガの仲間)と呼ばれています。
 写真の右上がメスです。メスは翅が小さく退化していて飛べません。冬尺はメスの翅が退化しています。また、口吻も退化して、成虫の期間中、飲まず食わずで過ごすものも多いようです。

 クロスジフユエダシャクは昼行性なので、オスが昼間ひらひらと飛んでいるのを見ることができます。見ていると、地面近くの低いところをあちこちさまよううように飛び回っています。なかなか止まらず、ときどき枯葉や地面に触れるように止まったかと思うと、すぐにまた飛び始めます。
 餌を探しているのでないとしたら、いったい何をしているのでしょうか。たぶん、地中からメスが羽化していくるのを見つけようとしているのではないでしょうか。羽化してきたメスはフェロモンを出してオスを呼ぶ(calling)そうですが、オスは少しでも早くメスを探し出すために、目でも探しているのかもしれません。

 これから3月ごろまで、井の頭公園内でも何種類かの冬尺蛾が現れます。多くは夜行性なので、昼間は木の幹や柵にじっと止まっているところしか見られませんが、たまに交尾や産卵している場面にも出会えるので楽しみです。

 体のいろいろな部分の退化や、あえて冬場に羽化・産卵する生き方に進化したわけをいろいろ考えると、一つ一つの生物がみな違う生き方をしている、つまり生物の多様性がますます鮮明に感じ取られます。

 これらの冬尺が、小鳥たちの冬場の貴重なタンパク源にもなり、冬の生態系をつくってもいるのですね。




2011年9月30日金曜日

冬虫夏草

これはなんでしょう?犬のフンではありません。野生動物のフンでもありません。
これはキノコです。俗にいう冬虫夏草で、ツクツクホウシタケという種です。その名の通り、ツクツクボウシにつく菌類で、写真左端が幼虫、右端が子実体(キノコ)です。たくさんあるものではありませんが、井の頭公園という身近なフィールドでもこのような生物が存在するのです。あらためて身近な自然の奥深さを知った想いです。
井の頭かんさつ会では未だ菌類をテーマにしたかんさつ会をやったことがありません。近いうちにやりたいと思っていますが、その際はよろしくお願いいたします!

2011年6月6日月曜日

月の女神と言われる蛾

 蛾も「苦手」「嫌い」と言われることが多い昆虫ですが、中にはなかなかきれいで魅力的と思われるものもいると思うのは私だけでしょうか。
 写真はオオミズアオ(大水青蛾)という名前のヤママユガ科に属する蛾です。開帳が100mm前後というかなり大きな蛾で、色が薄い水色をしています。

 学名はActias srtemis。ギリシア神話の月の女神アルテミスに由来しています。なかなかきれいだと思いませんか。

 ところでバーダーの人たちの中には、この蛾を見るとアオバズクを連想する人がいます。この蛾は夜行性で灯火などに飛来する性質があるので、夜に狩りをするアオバズクなどに捕食されることが多いからです。アオバズクがいたと思われる木の下に、20匹近くのオオミズアオの翅が落ちていたこともありました。

 私は今季、オオミズアオの羽化を3回見ましたが、ちょうど井の頭でもアオバズクの鳴き声が聞こえたという情報もあります。このきれいな蛾が飛ぶ姿も見てみたいし、アオバズクの姿も見たいですが、そのためには夜に観察しないとなりませんね。

2011年6月1日水曜日

アカスジキンカメムシは歩く伝統工芸品?

 カメムシと聞くと「臭い匂いを出すのでしょう。」と嫌がる方が多いですね。私はカメムシをずいぶん見てきましたが、今まで一度も匂いの被害にはあっていません。なので、カメムシもけっこう好みの昆虫です。
 あまり飛び回らないので観察しやすいし、いろいろユニークな生態をもつものがいて面白いのですが、 カメムシに最初に興味を持ったのは、写真のアカスジキンカメムシを見つけたときでした。「なんてきれいな昆虫だろう。ブローチにしてつけたいぐらい。まるで歩く伝統工芸品だ!」と思いました。

 アカスジキンカメムシは年1化で、7月下旬から5月中旬ぐらいまでの間、長い幼虫の時代を過ごします。一方成虫が見られるのは、5月中旬から7月ごろまでと短いのです。そのため幼虫はよく見らるのに、成虫にはなかなか出会わなかったので、それだけ初めて見つけたときはうれしかったわけです。

 最近はさすがに毎年よく見つけられるようになったので、感動は減ってきましたが、昨日は3匹も見つかりましたから、今が探すのにぴったりの時期だと思います。
 このきれいな模様も、葉陰に同化して見つかりにくくするカモフラージュの一種なのかもしれませんが、自然が作り出したデザインの素晴らしさにはびっくりさせられますね。

           よく見つかるアカスジカメムシの終令幼虫(この姿で越冬)

2011年5月25日水曜日

ゼフィルスの季節

 昨日の夕方3頭のアカシジミがコナラの木の上を飛び回っていました。今季初です。(写真は昨年のアカシジミ)


 アカシジミはミドリシジミ亜科に属するシジミチョウで、普通のシジミチョウより少し大きめです。この仲間は特別にゼフィルスと呼ばれることがあります。ギリシア語zephyrus(西風)が語源だそうです。

 ゼフィルスの仲間は、5月末から7月上旬の一時期にしか成虫が見られこと、きれいな色のものが多いことなどから、蝶の愛好家には人気です。日本には25種ぐらいいるそうですが、大抵は高地などにいる種類です。井の頭では平地性の3種しか見たことがありません。このアカシジミとウラナミアカシジミ・ミズイロオナガシジミです。

 みなさんもぜひこれら3種のシジミチョウを探し、年に一度のゼフィルスの季節を楽しんでください。井の頭でゼフィルスを見つけるには、コナラやクヌギの木やその下草を探すか、成虫が好んで蜜を吸いに来るクリの花で待つかするとよいと思います。

 昔は夕方になると、雑木林に上をたくさんのアカシジミが乱舞していたというような話を聞きます。ゼフィルスの幼虫たちはコナラやクヌギの葉を好んで食べるので、繁殖するにはそうした雑木林が必要なのです。でも、近年雑木林はどんどん減ってきて、ゼフィルスの数も少なくなってきました。少しでも多くのゼフィルスが見られるよう、井の頭の自然度を守っていきたいものです。
                       ミズイロオナガシジミ
                          ウラナミアカシジミ

2011年5月1日日曜日

ゆりかご

木々の展葉が進み、やがて新緑が深緑に変わってきて季節は春から初夏へ移ろいます。この時期に驚いたのはエゴノキに既にオトシブミの「ゆりかご」ができていることです。葉が伸びきるやいなや、いつの間にか仕事が終わっている。オトシブミはエゴノキの葉の展開を監視していたのでしょうか。このゆりかごの大きさや巻き方はヒメクロオトシブミの手によるものです。エゴツルクビオトシブミがゆりかごを「制作」するのはもう少し先になるでしょう。